口腔外科
「口腔外科」という診療科を単独で掲げている普通の開業医を見かけることはあまりないかと思います。
ほとんどの場合、口腔外科は「歯科・口腔外科」というように「歯科」と
セットになっているか、あるいは大学病院などの大きな病院の診療科として存在します。
ところで、この口腔外科がどのような病気を治療しているかをご存知ですか?
口腔外科は簡単に言うと、「お口の外科」という意味で、一般歯科が行うような虫歯や歯周病の治療とは違い、
口の中やその周囲の組織にある病気を取り扱います。
一般開業医の口腔外科で主に行われる治療は、親知らずの抜歯、そして顎関節症の治療などでしょう。
大学病院などの大きな病院ではその他にも口の中の腫瘍やその他の特殊な病気を扱っています。

口腔外科の代表は親知らず?
一般開業医の口腔外科で行われる治療として最も多いのは「親知らずの抜歯」と言えるでしょう。
でも、親知らずの抜歯は口腔外科を標榜していない一般歯科でも受けられます。
それでは一般歯科で親知らずを抜歯するのに比べ、口腔外科で抜歯するのはどのようなメリットがあるのでしょうか?
口腔外科で親知らずを抜歯するメリット
1.どんな抜歯にも対応できる
一般歯科の歯医者さんはオールマイティに様々な治療をこなせますが、抜歯が得意とは限りませんし、難しい場合には対応してもらえないこともよくあります。
口腔外科の歯医者さんは抜歯を専門的に数多くこなしているため、「難抜歯」と呼ばれる骨に深く埋もれた親知らずなどでも対応できます。
2.抜歯がスムーズ
口腔外科の歯医者さんは抜歯の経験も多く、テクニックを熟知しているため、通常、一般歯科医よりも抜歯のスピードが速いです。
抜歯というのは患者さんにとって大きなストレスがかかる治療であるため、早く抜いてもらえるのは非常にポイントが高いです。
3.抜歯に伴うトラブルが起こりにくい
普通の歯医者さんは歯の周辺のことに関しては普段からよく見ているので熟知していますが、骨の深い部分などはあまり触ることがありません。
口腔外科の歯医者さんはその点、顔面の解剖については知り尽くしているため、抜歯に伴う、神経や血管を傷つけるというような事故を起こす危険性が低いと言えます。
4.腫れや痛みが最小限
抜歯を専門としている口腔外科の歯医者さんは、抜歯するのにかかる時間や傷口を最小限にできますので、その分術後に出る腫れや痛みなども最小限にすることができます。
親知らずを放置するとどうなる?
親知らずを放置してもいいものなのか、疑問に思う人も多いでしょう。
実際、親知らずというのはケースバイケースで抜いたほうがいいのかそうでないのかが決まってきます。
親知らずを放置するメリット・デメリットにはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
親知らずを放置するメリット
1.ブリッジの支台にできる場合がある
親知らずを残しておくと、例えば手前の歯を抜かなければならなくなった場合に、ブリッジを入れる支えの歯として使える場合があります。
2.移植に使えることがある
どこかの歯が悪くなって抜かなければならなくなった場合に、親知らずをその部分に移植することができます。
親知らずを放置するデメリット
1.むし歯や歯周病になることがある
親知らずは磨き残しが出やすいため、親知らず自身がむし歯や歯周病になってしまうだけでなく、その手前の歯を巻き込んでしまうこともあります。
2.歯並びをずらしてしまうことがある
親知らずが傾いていたり、横向きに埋まっている場合、親知らずが手前の歯を押していくことで、全体の歯並びがずれてしまうことがあります。
3.口臭の原因になることがある
親知らず周辺が不潔になることで、細菌が繁殖し、口臭の原因になることがあります。
4.囊胞を作ることがある
親知らずが骨に埋もれている場合、まれに囊胞という病気を親知らず周囲に作ってしまうことがあります。
口腔外科で親知らずを抜く時の手順を教えて
親知らずを口腔外科で抜いてもらいたい場合、一般歯科で口腔外科を標榜している場合には、そこで直接抜いてもらえることがほとんどです。
しかし、難しいケースで対応してもらえない、もしくはそのような歯科医院が近くにないというような場合には、口腔外科のある大きな病院で抜いてもらえるよう、かかりつけの歯医者さんに紹介状を書いてもらうとよいでしょう。
紹介状なしで直接自分で予約を取って受け付けてもらえる場合もありますが、未紹介の場合、金額の負担が多くかかる場合もあります。
また、紹介状を書いてもらう場合には、撮ったレントゲンのコピーをもらって口腔外科に持って行けば、余計なレントゲン費用を払わずに済むこともあります。
親知らず以外の口腔外科はどんな治療がある?

親知らず以外で口腔外科が扱う病気は多岐にわたり、口の中やその周辺の病気で、顎関節症、顎変形症、歯や顎周辺の外傷、炎症、口腔粘膜疾患、先天異常、唾液腺疾患、腫瘍、囊胞、神経性疾患などが挙げられ、それらに対する治療を行います。
親知らず以外の口腔外科はどんなことをする?
口腔外科で行われるのは次のような治療ですが、入院が必要な治療や大掛かりな手術などは一般開業医の口腔外科では通常行わず、大きな病院で行います。
顎関節症の治療
顎が痛い、口が開きづらいというような顎の症状を伴う顎関節症の治療です。口腔外科ではマウスピースを使った治療や投薬などの治療のほか、ひどい場合には手術を行う場合もあります。
顎変形症の治療
顎の変形が原因の不正咬合があり、矯正治療だけでは治らないケースで、顎を切断したりする手術を行います。
歯や顎周辺の外傷
ぶつけたり転んでしまって歯や骨、粘膜などに外傷を負った場合の治療を行います。
口、顎周囲の炎症
口の中、顎の周囲組織の炎症、例えば膿瘍(膿だまり)や骨炎、歯が原因で起こった上顎洞炎などの治療を行います。
口腔粘膜疾患
口の粘膜に起きた様々な病気、例えば白板症、扁平苔癬、口腔カンジダ症、ヘルペス性口内炎などの治療を行います。
先天異常
口唇裂(上唇が割れている)や口蓋裂(口の天井部分が割れている)、唇顎口蓋裂(上唇と口蓋の両方が割れている)というような生まれつきの異常を手術して治したり、唇や頬と歯茎をつないでいる小帯に異常がある場合に切除を行ったり、生まれつき歯の本数が過剰である場合の抜歯などを行います。
唾液腺疾患
唾液腺の炎症や唾液腺腫瘍、唾液腺の中に石が溜まる唾石症などの治療(投薬や手術)を行います。
腫瘍
口の中、周辺の良性腫瘍や悪性腫瘍の治療(手術、化学療法、放射線治療など)を行います。
囊胞
口の中の粘膜や顎の骨の中にできる囊胞(中に液体のたまった袋状のできもの)に対する手術を行います。
神経性疾患
顔面に走る神経(三叉神経や顔面神経)の痛みや麻痺に対する治療を行います。
その他
舌痛症(舌に外見上異常はないのに痛みを感じる病気)に対して投薬治療を行ったり、歯がない部分にインプラント治療を行ったりなどを行います。
口腔外科に関して気をつけること
「口腔外科」と標榜している一般歯科医院は意外とたくさんあります。
しかし、その全てに口腔外科医がいるかというとそうとは限りません。
これはなぜかというと、日本においては特に口腔外科の専門医がいなくても「口腔外科」と標榜できるシステムがあるためです。
そのため、看板に「口腔外科」と書いてあるとしても、抜歯を始めとする口腔外科の治療が得意な先生がいないかもしれないので注意が必要です。
そのため、本当に口腔外科専門の歯科医師にかかりたければ、受診する前に口腔外科医が在籍しているのかどうかを一度確認してみることをお勧めします。
口腔外科・インプラント専門医
蔵原先生
